いつでも被害者
いつでも被害者(6)



 翌日、耀は学校に来なかった。
 向かいの棟の窓の向こうに耀が居ない。目が合うたびに睨まれていたその顔が今日は見られない。
 昨日の今日だったから、単純に心配だった。水を浴びて風邪になってしまったのかもしれない。もしくは単に秋介に会いたくないだけかもしれない。
 耀のクラスメートに彼の住所を聞きながら、秋介は自分で自分に危険信号を感じた。

(なんか俺……今、ストーカーみたい?)

 変に胸がどぎまぎとする。
 耀が前から言っていたように本当は自分は変質者なのではないだろうか、とさえ思い始めた。知らない所で耀が嫌がることを強要しているのでは。はたまた、自分には第2の人格があり、耀にひどいセクハラをしていたらどうしようだとか。
 でも、好きなのだ。
 普通の好きと変態的な好きの違いはどこにあるのだろう。分からなくなる。

(だから、これで……最後にしよう)

 もらった住所を握り締めて、今ここに居ない耀に誓う。これを最後にもう耀にはつきまとわない。
 これ以上、耀に迷惑をかけたくはなかった。



***



 学校が終わると秋介は早速耀の家を訪ねた。耀の家は大きな家だった。爪先立ちで高い塀の向こう側の様子を伺う。けれど、シンとしている。聞こえてくるのは木がさわさわと揺れる音だけだ。

(いないのかな?)

 チャイムを鳴らしても誰も出てこない。
 不意に耀のあの青あざを思い出す。どこかで考えないようにしていたあの青あざは一体誰にされたのだろうか。もしかして家の人……?
 嫌な考えが落ちてきて、頭を左右に振る。
 その後も家の窓を注意深く見るも誰もいる気配が無い。
 けれど、ある一つの思考も頭の中で交錯する。もしかしたら耀は家にいるかもしれない。秋介だと気づいて出てこないだけかもしれない。秋介に怯えているのかもしれない。

(もう、やめよう……)

 これ以上やったら本当にストーキングになりそうだ。
 ため息をついて、きびすを返す。重い足を運びながら、思う。

 これは、……自分で決めた事だ。
 これで終わりだと。
 けれどあっけない。
 なんてあっけなく終わるのだろう。
 なのに、なんでこんなにも胸が苦しいのだろう。
 ゴールテープを切った覚えなんてどこにも無いのに。
 こんな胸の痛みを引き連れたままで本当に耀のこと諦められるのかな。

 グスッと鼻を啜る。
 足元の自分の影が長く伸びていく。住宅街を抜け、道沿いの支流が流れ着く湾の向こうに消えていく光を目で追う。太陽の落ちぎわはまるで影と本当の自分が入れ替わりそうな時間帯だ。

(あ……れ?)

 ふと暗い豆粒くらいのシルエットを川原に見つける。
 彼はまた自分を変態と呼ぶかもしれない。そんな豆粒が耀だと分かってしまうなんて自分でも少しおかしいかなと思える。
 耀は地面に膝を抱えて蹲っていた。

「耀?」

 ゆっくりと歩み寄ると、耀がビクッと背中を揺らした。
 彼は半身振り返りながら、秋介をおそらく睨んだ。落ちる寸前の太陽は逆光を与え、耀の顔を鮮明に見せてはくれない。

「来るな」

 あと数歩で耀に触れそうな距離でそう言われた。ピリピリとした空気を感じ取り、秋介は歩を進めるのを止めた。何を言っていいか迷いながら、言葉にした。

「耀、あの、今日なんで学校来なかったんだ……?」

 耀は答えなかった。
 代わりに耀の息を吸う音が聞こえる。吸い込み終わる前にまた吸って、吐いて吐いて。途切れるリズム。耀の息遣いはなんだか少しおかしい。

「耀……どうかした?」

 スン、スンと空気がからぶる音が聞こえる。肩が揺れる様子を見て、やっと理解する。
 耀は涙をこらえている。

 秋介は一歩大きく踏み出した。

「来るなって!」
「耀……っ?」

 突如、耀が振り返った。目にはまんまるい雫を溜めていた。それは何度か瞬きすると、地面の草にほろりほろりと肥やしを与えている。

「もうやだ、俺なんでいつもこんな風なんだろ」

 耀は袖で自分の涙をゴシゴシと拭った。ひどく乱暴にするものだから、肌が一気に赤くなる。
 その顔を撫でてあげたいという衝動を拳を握り締めて秋介は抑制した。

「……どうしたの、耀」
「……パンツ取られた」
「へ」

 風が通り過ぎる。
 耀は制服を着ている。もちろん上も、下もだ。
 けれど、屈辱的に上気した顔で耀はそのまま続けた。

「学校に行く途中でいきなり変な男に押し倒されて」

 もぞっと耀は内股をこすった。秋介はそれを見ながら、カッと頭に血が上った。
 いきなりだ。自分でもゾッとするほど炎が湧き出た。

「何されたの」
「だからパンツをぉ……」

 耀は赤い顔を一層赤くした。そんな彼に秋介は直球で質問する。

「強姦されたの?」
「ちげーよ、バカ! パンツ取られたって言ってるだろ」

 耀は手を振り上げて怒った。乱暴されていない事に頭のどこかでホッと安心しながらも、顔は怖いまま治らない。

(パンツ取られたって……本当にそれだけ?)

 眉を顰める秋介に耀は説明的に言葉を紡いだ。

「俺、昔からいつもこんなんばっかりなんだよ。 小さい頃から変な奴らばかりにつきまとわれて」

 耀は川の流れを見つめる。昨夜雨が降ったせいで、流れははやいし増水している。
 耀は自嘲的に笑った。

「……お前にも教えてやるよ。 傷が増えてるの知ってるだろ? 俺の痛がる姿を好きな奴が一人いて、そいつが時々襲ってくるんだ。 俺が痛い顔をするとそれだけで満足した風に帰っていく。 そいつだけじゃない。 他にも定期的に襲ってくる奴が何人かいる」

 耀の青あざを思い出す。
 あれは知り合いにつけられたわけでもなかったのだ。分を弁えないサディストが耀を己の欲望のために傷つけた。
 耀は口元だけで笑っている。何も楽しそうで無いのに、ずっとそうやって生きてきたのだろう。強張った顔で、それでも笑っている。

「今までいろんな奴に会ったよ。 俺のことを女みたいに抱こうとする奴なんて数え切れない。 それよりも変なフェチズム持った人間の方がよっぽどタチ悪い。 今日会った奴だってそういう部類だ。 俺よりも俺の下着の方が欲しいんだぜ。 意味わかんね。 人のこと監禁しようとしたり、人のもの盗みまくったり、さ。 なんでこんなに俺ばっかり狙われるのかも分かんね。 小さい頃には何度も拉致されかけたし、だから格闘技だって習った」

 耀には、独特の空気がある。それはきっと見る人を勘違いさせてしまうような色気を含んだもので、だからといって耀の性格がそれに準じているわけではない。
 耀は膝に頭を埋めた。押入れの中で呟くように声がくぐもる。

「世の中は変態ばかりなんだよ」
「耀……」

 彼はおそらく膝の間で雫を垂らしている。肩が何度も大きく揺れるのを秋介は無言で見守った。
 正直どうすればいいのか、分からなかった。
 彼を慰めたいし、励ましたい。けれど、自分がここで抱きしめた所で彼を余計に傷つけるだけかもしれない。
 握りこぶしを作って、耀の後ろ髪を見つめる。
 撫でたい撫でたい。
 でも決して。
 撫でてはいけない、撫でてはいけない。

 しばらくしてから、耀が顔をあげた。赤い目が痛々しい。
 耀は眉を寄せて、目を細くした。おそらく、涙をこぼさないよう目に力を入れている。

「俺、なんでお前にこんなこと言ってるんだろ。 どうせお前だって同じ変態なんだろ」

 耀の言い草に秋介は目を見開いた。

「そんで俺から誘ったって言うんだ。 ”お前が誘ったから襲ってもいいんだ”、とかなんとか言って。 名前もちゃんと知らないのにどっかで調べてきてそのくせ間違えてヨウ君とか呼んでさ。 だから変態は皆嫌いなんだ」

 耀の言葉に耀の過去を垣間見た。
 耀は膝を抱いて頭を埋めた。またそうして暗闇の中へと戻っていってしまう。
 秋介は自分が言った言葉が耀の深い場所に侵入し、無残に傷つけていた事を知らされた。
 そんなに深く考えていなかったのだ。おそらく、耀の顔を注意深く観察すれば少しくらい分かったかもしれない。けれど、秋介はいつでも独りよがりな気持ちに従った。
 自分も耀が語る変態たちも自分の尻も拭えない卑怯者だ。

「ごめん……」

 秋介に言える言葉なんて一つだった。
 俯く耀にただ伝えたい。耀は何も悪くない、と。

「俺がこないだ言った言葉……耀が誘ったっていうのは嘘だよ。 きっと俺がそうなって欲しいって思ってたからそう見えただけだ」

 それが多分真実。「だから耀は何もおかしくないんだよ」、と説得する。

「耀は悪くないし、おかしくない」

 何度も何度も。誰よりも強く耀に秋介は呼びかけた。
 それが心に響けばいい。

 そして最後に。
 これは別に強く言わなくてもいい。響かなくてもいい。それでも口に出してしまうのは秋介の多分、最後の独りよがりだからだ。

「……俺は耀が好きなんだ」

 その瞬間、耀が顔をあげて目を大きくする。
 太陽が落ちて、辺りが暗くなる。道沿いの電灯がつき、逆方向からの光で耀の顔が浮き出る。
 耀は信じられない、という表情だった。

「は? だって……お前、俺のこと友達って」

 それは確か、前に耀を傷つけた女子に言ってた言葉だ。そんな言葉を気にかけていた耀が少し不思議だ。

「分かってなかったんだ。 俺、そういうの鈍くて」

 秋介はその場に立ち尽くしたまま、自嘲的に口角をあげた。

「耀はきっと俺みたいな変態嫌だよな」

 自分でついに変態だと肯定する言葉を言ってしまった。
 もうこれで後がなくなった気がしたけれど、別に耀の為ならもうなんでもいいや、と思う。
 不意に耀の言葉がぶつけられた。

「お前、ずるい奴だ」

 耀は怒った顔をしていた。口を結び、千の言葉を言いたげだ。

「え」
「だって……結局、俺が許さないと先に進めないんだろ」

 耀の言葉の真意が分からず、秋介は耀の瞳の色を伺った。耀は怒った顔をやめない。これは……そもそも怒っているのだろうか?赤い果実のようなみずみずしさを持った表情。
 耀は目を伏せてから、口開いた。

「お前は違うよ、お前はあいつらと一緒じゃない」

 赤い顔が更に深い赤へと染まる。

「だって俺もお前が好きなんだから」

 耀は簡単に答えをくれた。
 自分が他の奴らと違っていられる理由。耀を好きになって良い理由。

 耀の瞳はいつの間にか乾いていて、あの涙はどこへやら。と、思ったら秋介の目に移動していたようだ。珠のような小さな涙がうっすらと秋介の目元に現れる。
 秋介は耀の腕を引っ張った。そのまま、胸の中に耀を入れると、彼をぎゅっと抱きしめた。耀は何も言わずに秋介にされるがままだった。けれど、胸の中に納まった瞬間、彼はホッと息をつき、それが秋介をより高揚させた。
 ぶつかるようにキスをすると、耀が小さく唸った。

「ん……しゅうすけ……」

 名前を呼ばれてカッと頭に血が上る。無我夢中で舌を入れると、耀は苦しそうに顎をあげた。伏せられた瞳が艶やかに閉じたり、開いたりする。
 下着が無いせいか、耀はウズウズと内股をこすった。かわいいな、と思って手を差し出そうとしたその瞬間。

「何、やってるんだい……ヨウちゃん」

 ハァハァと激しい息遣い。おそらく三十路を超えたような大の男が二人を見つめていた。
 耀は慌てて秋介から離れようとした。それでも、秋介は耀を腕の中から離さなかった。
 秋介の腕の中で耀は眉を顰めていた。

「ヨウちゃん、そんな顔してどうちたの。 そいつにいじめられたの?」

 耀の舌打ちが聞こえた。
 男の目元は深く窪んでいて、淀んだ色のくまが見える。体型はがっしりしていて、体育会系だ。その体つきも極端な猫背で奇妙な印象を与えている。髪型はボサボサで、無精ひげも服装も汚らしい。

「ダ、ダメだよ、……ヨウちゃんを虐めるのはボクなんだからっ」
「……この変態が」

 秋介の凍てついた言葉に耀は「え」と秋介の顔を見上げた。耀を後ろに遠ざけて、秋介はゆらりと前に進み出る。
 今。秋介は自分でもわけがわからないほど、黒い感情に支配されていた。普段では絶対思わないようなことも考える。
 ”コイツ、今すぐ消えればいいのに”。

「耀は俺のだ」
「あかる? 誰それ? ヨウちゃんはヨウちゃんでしょ?」

 ゾッと怒りが増す。
 耀は今までこんなのと一人で戦っていたのか。

(かわいそうだ)

 守りたいなんて、大層な気持ちとはいえないかもしれない。
 ただ、今目の前にいる男をこっぴどく蹴散らしたい。それだけだった。
 自分はただの嫉妬に狂った男だ。

「消えろ」

 自分のものと思えないような刺すような声で秋介が言うと、男はにへらと笑った。頬肉をあげて、目を逆三日月のようにして薄気味悪い笑みを浮かべる。

「なんで? ヨウちゃんは僕のだよ? 君は何、自惚れてるの?」
「自惚れてるのはお前の方だ」

 秋介は迷わなかった。

 ガッ

 ドスンと巨体が地面に落ちる。狙いを定めるまでもなかった。無防備な鳩尾に拳は簡単に埋まった。
 耀が驚いて、目を瞠る。

「……き……み、……な、何をするんだ……」

 腹部を抑えながら、男が声を震わせた。みるみると顔色が青くなる。それを見て、少しだけ胸がスッとする。
 秋介は臥せ落ちる男に近寄って、胸倉をつかんだ。グイッと力を入れると、男を少しだけ吊り上げる。

「二度と耀に近づくな」

 秋介の言葉に男はひきつった笑みを浮かべた。

「なななんで、そんなことを」
「……近づいたら、死ぬまでタコ殴りにしてやる」

 怒気を露にすると男はヒィィィと叫び声をあげて逃げていった。
 不意に耀が秋介の袖を掴んだ。秋介が振り向くと、耀は悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

「秋介……って強いよな」

 秋介は耀につられて笑った。

「俺もいろいろと昔から絡まれる事が多かったからさ」

 守りたいだなんて言うときっと耀は怒るだろう。
 けれど、ずっと一緒に居て助けになりたい。耀が一人で立ち向かわないように。ギリギリで戦わなくて済むように。
 耀は目を伏せた。

「秋介……今からうちに来る?」

 その言葉に秋介はぼわっと湯気を上げた。
 耀の家には今誰もいない。先に寄ってきたからそれはもうリサーチ済みだ。いやいや、リサーチだなんて調べたわけじゃないんだから言葉がおかしい。偶々だ。た ま た ま。

「いいいいっていいの?」

 今行ったら確実に手を出す自信がある。それをわざわざ宣告するのは趣味が悪いかもしれない。けれど、耀には嫌われたくないから。

「俺、耀に触るよ?」

 耀はぎゅっと口を尖らした。唇と頬が誘うように赤ばむ。

「……ばぁーか」

 耀は秋介の手を掴むと、落ちていたかばんを拾い、川沿いをズンズンと歩き始めた。

(それって触っていいの? 悪いの? どっち!?)

 頭の中でぐるぐると思考が廻る。秋介の脳みそは耀にめちゃくちゃにかき混ぜられている。湯だって中身が溶けてしまいそうなくらい。
 引っ張られた手が熱くて、そこから燃え出してしまいそうだ。

 家に着き、秋介は部屋に招き入れると、耀は徐に制服の上着を脱いだ。

「わわ、耀」
「……あついんだよ」

 耀は不機嫌そうに……いや、照れた顔で秋介を睨んだ。秋介は頬も額も赤くして、それでも耀をガン見してしまった。
 たまらなくなる。秋介が耀の背後をとり、汗ばんだうなじに吸い付くと、耀は艶かしい喘ぎを漏らした。

「ん……しゅうすけ」
「あかる……ほんと熱いね」

 シャツに手を入れて、耀の胸を撫でる。耀は目をつぶりながら、甘い吐息を吹きかける。

「ん……ふぅ」
「体の中まで熱いや」

 耀の欲情を肌で感じて、自分も高揚する。
 耀が欲しい。今すぐに抱きたい。
 そう思ったその時。

(え!?)

 耀の全身の力が一気に抜けた。慌てて、その体を受け止めたが、耀はひどく呼吸を荒くしていた。

「ご……ごめ」

 謝る耀の額に手を当てると、発火しそうなほどに熱い。

「ちょ……熱あるじゃん。 めちゃくちゃ熱い」

 そうだ。昨日水をかぶったのだから、風邪を引いてもおかしくない。
 耀は構わずに秋介の首に手をまわした。

「いいから」
「よくない」

 嫌がる耀をそのまま担いで、ベッドに寝かせてやる。
 耀は不満げに眉をよせた。どんな意地か分からないが、耀は繰り返して言った。

「いいから今しろって」
「ダメだって」
「俺、熱が下がるとまた意地はっちゃうかもしんない」

 耀は自分の性格をよくご存知で。こんなに素直なのは熱があるからだと自分で言っている。
 秋介はフッと笑った。

「いいよ。 正気の時の耀を素直にさせたい」
「そんなん絶対無理」
「無理でもいいよ。 俺、どれだけでも頑張るから」

 耀は不安げに秋介を見つめた。
 確かにちょっと危険な考え方かもしれない。
 別に罵られても、殴られてもいいだなんて。けれど、どんな被害を受けてももう大丈夫だと思う。
 耀の本音はもうここに見つけたから。

「耀、大好きだ」

 耀の指先にキスをすると、耀は本当に小さい声で「……俺も」と呟いた。おあずけを食らった人間としては、その言葉だけで体が熱くなってしまいそうになる。
 そして、耀は更に小さい声で囁いた。

「……本当は最初から……」
「え?」

 秋介が耳を澄ませるが、その言葉の続きは彼の夢の中。スーッと寝息をたてて目を閉じた耀を恨めしげに秋介は見つめた。

「ちょっと……あかる……?」

 不満げに問いかけるが耀の目は開かない。赤らんだ寝顔が可愛らしくて、胸のうちにある「好き」が簡単に何度も倍増していく。天使のような顔で寝る耀を起こそうにも起こせるはずなんてないのだ。
 ……明日の君は続きを言ってくれるかな?

(多分、言ってくれないだろうな)

 本当に厄介な人間だ。
 それでもこれからは照れ隠しの向こうの気持ちを探そうと思う。
 ちょっとした冒険者だと思えばいい。宝物を探すように耀の本音を探したい。

 秋介が耀の髪に手を触れると、耀は天使の寝顔のまま楽しい夢を見ているかのように笑みを小さく浮かべた。





おわり



ヤっちゃえよって思った人ごめんなさい(笑)私、我慢する攻めが好きみたい……
written by Chiri(5/15/2010)