truth-and-lies(2) 「疲れたか?」 結局閉店まで居座った俺にママは優しく声をかけた。 俺は笑って返事を返す。 「全然。」 「そうか。」 ママは優しく俺の額に甘いキスを落とす。 「可愛い可愛い俺の智。」 ママは歌うように呟いた。俺もそれに対して小さく笑みを返した。 (俺はママのもの。それは当り前。) ママのものでいるのが俺の幸せなのだ。 (けれどママは誰のもの?) ママは俺を捨てることができるけど、その反対は無いのだ。 それが何故かとても切なかった。 *** 結城とはもう会うことは無かった。 結城があの日来たのも既に酔っていて自分を抑えられなかったからかもしれない。 それでもあの綺麗な顔が。涙で歪んでいて、とても哀れに見えてしまったあの姿が。 俺の胸に刻まれてしまった。 あんな綺麗な人でも捨てられるんだったら? (なら俺はどうなるんだろう…。) 俺はふぅっとため息をついた。 甘美な日々を満喫するなんてもうできない。 ママの甘い言葉も口付けも信じることができなくなる。 あれからママとは変わりなく会っている。会ってはキスをして、セックスして。それでも俺の心の中に小さくて黒い粒みたいなのが広がっている。 ある日、俺がいつものように開店前の店にいると、何度か会ったことがある真治という男が店に入ってきた。 両手にダンボールを二箱抱えて、店に入るなりそれをそこにドンッと置く。 ママは中で仕事をしていた。俺はそんなママに少しだけ役に立ちたくて店の床掃除をしていたところだった。 「なんだ、お前か。」 真治はまるで対等とは思えない口調で俺を見てきた。と、いっても体格的に言っても対等だなんて口が裂けても言えなく、俺と真治だとまるでライオンと鼠みたいだった。 「よかったな、あれから無事くっついたんだろ?おめでとさん。」 真治はなんでもないことのように言った。俺はなんだか恥ずかしくて口を紡いでしまった。 「アイツな、昔から変に生真面目だから、こんなに時間かかってやんの。俺は最初から「無理やり喰っちまえばいいじゃん」って言ってたんだけどなぁ。」 真治は笑いながらそんな話をした。 (無理やり喰うって…俺のこと!?) 俺はあからさまに嫌悪感を顔に出した。けれど次の瞬間、口元を緩めて、頬を赤くした。 (あ、でもママだったら別に…むしろイイ…かも…) それを見ていた真治は突然プハッと噴出した。 「あはは、お前まじバカ可愛いな!アイツが好きそうなタイプだぜ!」 「バカ可愛いって…っ!!」 「アイツ、馬鹿で可愛いの大好きだからなぁ。俺は遠慮するけど。」 俺は頬を膨らませて怒っているが、真治には何の効果もきたさない。見よ、この微々たる力。 けれどふとひらめいた。 (この人って、ママのこと、昔から知っているんだ!) 前、ジェシカが言っていた。昔、ジェシカと真治とママは同じ高校だったらしい。最もその頃から仲が良いというわけでもなかったらしいが。それでもその頃からのママを真治は知っているのだ。 俺は周りを見渡した。もちろん開店前だから客も入っていなく、ママも店の奥にいるから2人の会話は聞こえていない。 「あのさ、真治…さん?」 「ああ?何だ?」 「…聞きたいことがあるんだけど。」 俺が言いにくそうにそう言うと、真治は睨むように俺を見つめて、その次の瞬間にやぁっと嫌な笑みを浮かべた。 「いいぜぇ?何でも聞けよ。その前に…。」 真治は足元に置いた二箱のダンボールを持ち上げると、「こっちに来い。」と俺に言った。俺は頭の上にハテナを飛ばしながら、真治の後についていった。 連れて行かれた先は地下のワインセラーだった。 真治は目の前でダンボールの包みを豪快に開けた。中にはたくさんのワインが入っていた。 「俺はコイツを補充してるからその間に何でも聞きたいことがあるなら聞けよ。」 そう言うと、真治はダンボールに入っていたワインを棚に次々と収納していった。 俺はそれを見て真治に近づいた。 「あの、手伝います。」 「ああ?まぁいいけど。で?なんだよ?」 俺はワインを手にしながら、言いにくそうにうつむいた。 本来ならこんなこと周りから聞いてちゃいけないと思った。…けれど。 「はぁぁぁぁ?今まで恭一がふってきた男の末路が知りたい?」 俺の質問内容を聞いた真治はなんじゃそりゃ?と変な顔をしてきた。 それでも俺が神妙な顔をしている事に気付くと、うーんと頭をひねってくれた。 「そうは言ってもなぁ?本当の事言うと、俺、あいつとそこまで仲良くないし。今でもあいつのことよく分からないのに、それと付き合った男達がどうなったかなんてしらねーぞ?」 「…そうですか。」 俺は更に俯いた。おかしなことを聞いている自覚はあったから、余計に恥ずかしかった。 (でも仲良くないって…) ふと真治の言葉に疑問を持ってしまった。仲良くないのに共同経営っていうのも不思議だ。 「真治さんはママとは高校からの友達って…。」 「友達!!?んなわけねーじゃん。あいつ俺のこと軽蔑してたし。」 「軽蔑??」 余計に頭がこんがらがってしまう。 「まぁな。俺高校の頃、男関係でかなり無茶してたから、アイツにいつも言われてたよ。「ゲス野郎」って。まぁ、実際にゲスな事はしていたんだけどな。それにしてもアイツの語彙力もおかしいよな。ゲスって普通でてこねぇっつーの。アイツって変なところですげー潔癖っていうか、生真面目っていうか。」 真治はおかしそうに笑った。 俺は、…なんだか笑えなかった。 真治はそのまま続けた。元々しゃべるのが好きなのだろう。 「社会人になって偶然会ったんだ。今度は俺もまぁ落ち着いていて、なんか話が盛り上がって一緒にバーを出すかって話になってさ。俺、金持ちのボンボンだったから、ここの出資金はほとんど俺だぜ?その代わりアイツが全面管理して、その一部を俺がもらうって形。俺がいつもここにいないってのも俺は好きなことだけしてていいって言われてるからさ。海外に適当に遊びにいって旨い酒を輸入してくるんだ。俺の仕事ってぶっちゃけそれくらい。」 真治は俺によく分からない銘柄のワインを見せるとニカッと笑った。 俺はつられて力の無い笑みだけ返した。 「なんだぁ?元気ねーなぁ!大丈夫だぜ!アイツ、何気にお前にぞっこんだし!」 (ぞっこんって…。) 俺は苦笑しながら、ワインを棚に入れるのを手伝った。 その時、ふとママの声がふってきた。 「智!!」 ワインセラーの扉がバーンと開くと、ママが飛び込んできた。そのままの勢いで俺を抱きしめると、キッと真治を睨む。 「てめーゲス野郎!!智を連れ込みやがったな!!」 「あ、久しぶりにそれ聞いたな。」 真治はニタニタした顔でママと対峙していた。 俺はママの腕の中で必死に顔だけ出した。 「違うんだ、ママ!ワイン入れるの手伝ってただけだよ!!」 ママは怒ったままの顔で俺を睨んだ。 「お前、この男に簡単に気許すんじゃない!こいつ、学生の頃、本当に遊びまくってて、周りの男を食い散らかしていたんだからな!」 「はいはい、お前の可愛い智ちゃんには手を出しませんから安心してくださいねー。」 真治はそれだけ言うと、ダンボールのワインを入れ終わったのか、階段を上って出てっていってしまった。 俺がそっとママの顔を覗き込むと、ママは不機嫌そうに真治を追いかけていた。 ふと目があうと、ママは俺の耳に囁いた。 「あとでお仕置きな。」 俺の体はぶるっと震えた。 その夜、暗闇の中でもぞりと動いた俺にママは目ざとく気付いた。 「智?寝れないのか?」 (もう寝てると思ってたのに…) そう心の中で思っていたなんて言えずに無難に返事を返す。 「ううん、なんでもない…。」 「…そうか。」 あれからママにたっぷりお仕置きされて愛された後も俺は頭の中で真治の言った言葉を考えていた。 潔癖で生真面目。真治のことを「ゲス野郎」って呼んでいた。 なんだかそれを聞くとママはまるで汚いものが嫌いみたいな感じだ。 そう思うと、俺の体こそが汚いんじゃないかと思えてくる。 俺は前の彼氏が浮気男だった。それでもアイツに固執してずっと別れなかった。何度浮気されても浮気さえ許して諦めて俺は馬鹿みたいにアイツと付き合い続けていた。その前は暴力男だ。俺を気が済むまで殴った男。それだって向こうが明らかにおかしいのに俺はずっと別れなかった。そう思うと、多分、そういう意味での純真さは俺には無いのだと思う。 結城の言葉を思い出す。 『現に俺ともラブラブだったんだ!甘やかされて、どんな我儘でもきいてくれて、毎日のようにセックスして毎日愛しているって言って!!なのに、ある日突然別れようっていったんだ!!』 きっと結城はママの生真面目さに触れるような何かをしてしまったのかもしれない。 それだけでママは結城にしたようにああやって冷たくなってしまうのだろう。 ママを嫌いになんてなれるはずがない。 けれど、もしママが俺を捨てるというなら。 その日が来るのがひたすら怖かった。 その日を思うと眠れやしなかった。 *** ある日、俺がhide-and-seekのいつもの場所で飲んでいると突然話しかけられた。 「最近、智君ってば元気無い?」 いつの間にか隣に座っていたジェシカの声に、俺はハッと顔を上げた。 ジェシカはいつもの笑顔をなんとなく曇らせた表情で俺を見ていた。 「ごめん、そんなこと無いよ?」 「嘘!智君って嘘下手よね。なんか気にしていることでもあるの?相談に乗るわよ?」 「えー…別に何もないよ?」 俺が笑って見せると、ジェシカは目を吊り上げた。 「もう!その顔やめなさいよ!欲情しちゃうでしょ!!」 「えええ!!」 (相談に乗ってくれるんじゃなかったの!?) 俺はサッと体を引くと、ジェシカは「バカ、冗談よ!!」と更に怒った口調で言った。 「ハハ、ですよねー。」 俺が無理やり声を出して笑うとジェシカは不機嫌そうに眉を顰めた。 「いいから!全部吐き出しちゃいなさいよ!私のやわらかな胸で受け止めてあげるから!!」 「ってそれどうせシリコン…。」 「うるさーーい!!」 有無を言わずに抱きしめられた。 シリコンってやわらかいんだなぁって思っていると、ジェシカに頭をなでられた。それが優しくて心地よくて思わず俺はなんか涙が出てきた。 「ジェシカ…あのさ……。」 「ん?」 「俺…、俺さ……。」 「あ、ちょ、ちょ…っと待って…智君…。」 なんか突然ジェシカの声色が変わったけど、そんな今更止められなかった。 俺はずっと思っていたけどいえなかったことをそのまま吐き出してしまいたかった。とにかく楽になりたかったんだと思う。 「ジェシカ……俺、いつ…ママに捨てられるのかなぁ…?」 俺を撫でていたジェシカの手が硬直する。 それを俺は不思議に思って、顔を上げた。 ジェシカの顔はある一点を見たまま、凍り付いていた。 不思議になって俺が振り向くと、そこには… ママがいた。 怖いほどの笑顔をはりつかせて。 俺とジェシカがその場で硬直しているのに構わずママは俺を呼んだ。 「ちょっとこっちへいらっしゃい?智・ち・ゃ・ん?」 改めてジェシカがママの女言葉におびえる意味が分かった。 ママの女言葉ってめちゃんこ怖い…。 有無を言わさず俺を二階に連れて行ったママは俺をベッドの上に転がした。 「本気でお仕置きが必要みたいだな、智ちゃんは。」 もはやママは笑ってなんかいなく、俺を冷たい目で睨みつけていた。 「ママ、あの、さっきの…ご、ごめんなさい。俺……。」 俺が謝ってもママはそのまま怒ったままだった。 「お前、俺が信じられないんだな…。」 傷ついた表情をしたママに俺はなんとも言い返すことができなかった。 だって、俺、本当に信じられなかったんだ。 自分がこんなに幸せなんて変だと思っていた。 こんなにかっこいいママが俺をずっと好きでいてくれるなんておかしい。だって俺、今までろくな男とつきあったことないし。ろくな別れ方だってしてないし。それなのに、って。 結城を見たときだって、俺もいつかああなるんだって言う風にしか思えなかった。捨てられるのが当り前だって思ってたから。 でもね、ママ。 でも、俺はね。 ママはクイッと俺の顎をつかんで上を向かせた。 見れば、さっきの傷ついた表情はなく、ママに極上の笑顔が戻っていた。これから獲物をいたぶるのが楽しみで仕方ないという笑い方だ。 「さぁて、智ちゃんにはこれからいろいろと頑張ってもらおうかな?」 俺は思わずその場でヒィィっと悲鳴をあげた。 それからママは俺にいろんなものを突っ込んで、でもずっとイかしてくれなくて、ずっと寝かしてくれなくてたくさん我慢させて恥ずかしいことをたくさん言わせて、そして最後にやっと抱いてくれた。 俺は途中で気を失ってしまって、起きたらもう朝だった。 ママは隣にいない。ベッドには俺しか寝ていなかった。 (昨日、店、結局どうしたんだろう…) 腰をあげようとしたら、力が全然入らなかった。 また真治さんにどうかしてもらったのだろうか? 俺はハァッとため息をついた。 すると、寝室のドアが静かに開いた。 見ればブスッとしたままのママがそこに立っていた。 「ママ!」 俺がママを呼んでも、ママは答えを返さない。 目は俺を見ていなくて、ただ腕を組んでその場に立っているだけ。 (どうしよう…) 鼓動が強くなる。 もう一度腰をあげようとするが、どうしても立ち上がれなくて俺はその場にへたり込んだ。 「ママ、俺のこと、嫌いになったの?」 言った瞬間、涙がボロボロと粒になって出てきた。 ママに捨てられる日のことをずっと不安に思っていた。 けれど実際に引き金を引いてしまったのは自分かもしれない。 自分がこんなにママを疑わなければこうやって別れの日をはやめることもなかったのだ。 「ごめんなさい。ママ、許して。」 ママに手を伸ばすけど、ママは動かなかった。 どうしてもママに触れたくて、ベッドから這い出ようとしたら、そのまま落ちてしまった。 ドターン 思いのほか、派手な音を立ててしまった。 「いたた…。」 ただでさえ痛い腰に更に刺激を与えてしまって、痛みが倍増した。俺が涙目で立ち上がろうとすると、不意に誰かが俺を抱き上げた。 ママだ。 「バカ野郎。立てもしねーくせに。」 ママはそのまま俺をだっこすると、ベッドにまた寝かせてくれた。 「ママ、怒ってる?怒ってるよね?」 「ああ、怒ってる。」 「ママ、ごめんなさい。だから俺のこと、捨てないで。」 ママは目を細めて俺を凝視した。 そして小さく口を噛むと 「…誰が捨てるかよ!」 と呟いた。 それだけだったけど、俺は心底ホッとした。 まだ捨てられないんだと思うとそれだけで十分だった。 「ごめんなさい、ごめんなさい、ママ。俺、多分おかしいんだ。今までいろんな男に裏切られてきたからかな。なんか信じようとしてもママのこと信じられないんだ…ごめんね、ママ、ごめんなさい。」 俺は泣きじゃくりながらママにしがみついた。 ママは俺の背中を撫でて、小さく息をついた。 「…お前は、そうだったな。俺も…すまなかった。」 俺はママを信じることができなかった。それは今までの男と同じだ。けれど、ママにだけ思ったこともあった。それが俺の特別だった。 俺はごくりと息を呑んだ。 「ママ、聞いて。俺、ママはいつか俺のこと捨てるって思ってる。それが当り前だって思ってる。けどね!俺はずっとママが好きだから!だから、その時になってもママの言うこと聞かないから!簡単には捨てられてやらないからって!!…そういいたかったんだ。」 ママを信じることなんてできなかった。 だってママはこんなにも極上な男なのだ。それを何故俺が?といつも思っていた。 あんな綺麗な結城とは別れたのに、なんで俺?とずっと考えていた。 けれどそんなのは関係ないとも思っていた。 ママがいつか俺を捨てることになっても、俺の気持ちはずっと変わらない。 俺はずっとママが好きだ。 それだけはきっと不確かなものであふれている中での唯一確かなものだった。 「…そうか、分かった。」 見上げるとママの顔はさっきよりもずっと柔らかく微笑んでいた。 「俺もお前が俺を信じてくれるまでずっと離さないから。」 怒っていたのが嘘のように、俺を抱きしめて、キスを降らしてくる。 「ちょ、ちょっとママ、くすぐったいよ…っ!」 俺がそういうけどママはやめない。 首元に痣を残して、そのまま耳元で囁いた。 「お前の気持ちはよく分かった。だがな、今度真治と2人っきりになったり、兼三と抱き合ったりしていたら、許さないからな。」 俺はきょとんとしてママの顔をのぞき見た。 ママはぞくりとさせる野獣の目をしていて、それが俺の頬をピンクに染める。 相変わらず俺はママのこの獰猛な瞳が大好きなのだ。 ママはそんな俺に気付いたようで、フッと口元で笑った。 「まー智ちゃんの場合、お仕置きも大好きみたいだけどな?」 言われて、俺は首まで真っ赤になった。 確かにお仕置きと称して散々ひどいことをされた昨夜も最後には喘ぎまくって感じまくっていたのだ。 それを思い出すと随分いたたまれない。 「じゃ、智ちゃん、言い方変えるな?今度浮気したら、もうお仕置きしてやらないから。」 …それは困る! 咄嗟にそう出てきて、俺は変に焦った。 「し、しないよ!!今度も何も浮気だなんて!!」 俺は手を大きく振って、否定した。それをママは見てくすっと笑う。 「…知ってるよ。お前は暴力ふるわれても浮気されても、自分からは浮気しないもんな。そういう一途でバカなところが好きだぜ?」 「えええ??」 一途でバカってちょっとひどくない? ママはそのまま続けた。 「俺、浮気だけはマジで許せないんだ。前の奴ともそれでこじれて、一気に冷めた。他のどんな我儘は許せてもそれだけはダメだ。」 俺はふと気付いた。もしかしてそれって…。 「…前の奴って結城って人?」 「まぁな。」 なんかドッと力が抜けた。 あんな綺麗な人が何をしたら、ママはあの人を捨てるのだろう、とずっと思っていた。 …けど。 いや、浮気はよくないよ。うん、浮気は。 「あの頃から俺バカな奴が好きでさ。アイツの言うアホな我儘なんでもきいてたら、浮気までしやがって。流石に冷めた。」 「あの頃からって…。」 それってやっぱり俺もバカってこと?? 俺は口を尖らせて、ママを睨んだ。ママは苦笑して、俺の頬をその大きな手で撫でた。 俺はその手に自分の手をかぶせた。 「なんかね、でも、俺、自信わいた。」 ママはすごいかっこいい人で。俺なんて全然つりあわないと思っていた。 けど。 「浮気しないってう条件でなら、俺ほどママに適した男はいないと思うよ!!だって俺は暴力されても浮気されても俺からは絶対に浮気しないもん!!」 俺が自信満々で言うと、ママにでこピンされた。 「馬鹿!俺が暴力や浮気するっつーのか。」 そういいながらもママも笑っていた。 まだまだ俺は未熟者で、ママにつりあうというわけにはいかないけど。 けど、ママのことは誰よりも好き。 この気持ちだけでこの先どうにかならないかな? 分かんないけど、どうにかさせようと思う。 もしママが俺を捨てようとする日が来るのなら… 石にかじりついてでもママにかじりついてでも、絶対捨てられてたまるもんかって思う。 それが俺のこの恋に対する最後の意地なんだ。 おわり truth-and-liesっていうのはアメリカで昔流行ってたゲームの名前でした。 written by Chiri(9/27/2007) |